大判例

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東京高等裁判所 昭和51年(う)2490号 判決

被告人 吉田賀津子

〔抄 録〕

所論に鑑み、記録及び原審取り調べの証拠を検討すると、原判決が、その挙示引用の証拠により、被告人に対し原判示覚せい剤不法所持の犯罪事実を認定した措置は、優にこれを首肯することができる。すなわち、覚せい剤取締法一四条一項が禁止する覚せい剤の「所持」とは、覚せい剤であることを知りながら、これを事実上自己の実力支配内に置く行為を指称し、積極的にこれを自己又は他人のため保管する意思の有無又はその行為の目的、態様の如何を問わないものと解するのを相当とするところ(東京高裁昭和三一年二月二七日判決、高裁特報三巻五号一七六頁参照)、原判決挙示の関係証拠によれば、原判決が「争点に対する判断」の項を設けて認定した(1)ないし(5)の各事実は優に認めるに足りるのであって、就中、被告人が、住居である肩書メゾン西喜三〇五号の自室六畳間にある被告人専用ベッドの枕元飾り棚の上に置かれた電話器の下から偶然ティシュペーパーに包まれていたビニール袋入り本件覚せい剤を発見し、以前に覚せい剤を使用したことのある経験から、それが覚せい剤であることを察知し、その一部を自己の左腕に注射して使用したのち、残りの覚せい剤を元通りティシュペーパーに包んで再び前記電話器の下に隠し、警察官の捜索差押を受けるに至るまでそのまま自己の実力支配に属する同所に留め置いた事実が明白であることに徴すると、右の客観的諸状況に照らし、「被告人は本件覚せい剤を事実上自己の実力支配下に置いていたものと言わざるを得ない」、と判断した原判決の措置はまことに相当であると認められる。所論のように、仮に、被告人が前記ティシュペーパー内の覚せい剤の一部を使用したのちこれを元の位置に戻すに際し、自己又は吉田昭のためにこれを支配する意図を有せず、また、同人との間に本件覚せい剤についての共同所持の意思を通じたこともなく、更に、右ティシュペーパー内に存在したパケは二個であって、そのうちの一個を被告人が使用し、他の一個を元に戻したものであったとしても、これらの事実は原判示犯罪事実の認定に毫も影響を及ぼすものではなく、原判決には所論の事実誤認を疑うべきかどは認められないから、論旨は理由がない。

(木梨 奥村 佐野)

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